ナツの思い出
それから…
翔とは会っていない。


病院には行けなかった。


門前払いされることを
わかっていたから…

違う、
私は翔に会ってはいけないことを
わかっていたから。



そして…
私はじぶんを責め続けたまま、
前に進めないまま、
3年がたとうとしていた。




「―ねぇ真梨那、聞いてる!?」

しばらく昔の記憶を
思い出していたせいか
手は汗ばんでいて、
頬には涙がつたっていた。


「…ごめん、
聞いてなかった。」


「翔にさ、
会ってないんでしょ?
そろそろ切り替えなきゃ。
まだ眠り続けている翔を
いつまでも思っているつもり?」


そう、
翔はまだ眠っている。


そして私の心の中も
まだ眠っているように、
時計は進んでいない。

あの頃の翔を好きな私と。


少しは
笑えるようになった。


学校にもちゃんと行って、
友達とも遊ぶようになった。




それでも…
ふと翔の顔が浮かんでくると
涙が溢れる。


まだ…忘れられない、
そう思う。





そんな私を
翔はどう思いますか?


あなたをあんな目にさせた私を
…恨みますか?


今でも好きなんて図々しいですか?



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