ナツの思い出
そんな事を考えている間に
また携帯が光る。

姫架からの電話だった。


−ピッ

通話ボタンを押して
携帯を耳にあてて
恐る恐る

「もしもし?」

といった。


私がそう言うと、

姫架はすぐに話し出す。


「真梨那、
わかってるんでしょ
メンバーくらい。

祭りに行くか行かないか、
ただ迷ってるだけ。
そうでしょ?」


姫架には
なんでもお見通しだな…。

さすが、
親友歴10年だね。


あたしは観念して
正直に自分の気持ちを
言葉にした。


「…うん。

だって
わからない…」


「何が?

何が
わからないの?」

姫架はその理由をわかっていながらも

私に
話させようとする。


「だって…私が、
あの日あの時あの場所に
いなかったら…」

そこまで言って言葉に詰まる。


その先は私の口から出されることはなく、
姫架がはぁ、と深くため息をついて

「翔は
今ここにいた?」

と代わりに言った。



そう…

そうだよ…。


私がいなければ、
翔は笑って
いられたのに。

ずっとここに
いられたのに。



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