恋する旅のその先に
その後、どうなったかというと。
ドラマとは違って、それ以来特に進展なんてありゃしなかった。
多少女子にしばらくは冷たい目でみられはしたものの、担任から「以後気を付けるように」と注意されたくらいで。
ここで男らしく保健室で横になってた彼女に「ごめん」のひとことでもかけていれば……。
ところが俺ときたら。
“ばつ”の悪さと後悔にあっけなく萎縮。
素直になることは“負け”だと、無理矢理自分に思い込ませて彼女を避けることしか出来なくなったんだ。
あぁ本当に、ガキ。
典型的な、ガキ。
そして今でもそれを忘れず、こころの奥にずっと澱(おり)として抱えている俺は──
一体なんだろうな。
誠実なこころに目覚めた大人ってわけでもない。
かといってあれを後悔しないガキでもない。
そんなもんさ、と割り切れるほど前向きな人間でもない。
でも。
過去を精算するには時間が経ち過ぎた。
もし仮に、今の彼女に再会出来て謝ったとしても。
あの日ついた彼女のこころの傷が消えるわけじゃない。
いや、案外彼女はそんな過去なんてとうに忘れているかもしれない。
迂濶に掘り返して、何の意味があるのか。
そんなものは、自分が救われたいだけの──自己満足だ。
そう。
過去を精算するには時間が経ち過ぎたのだ。
学校の校庭が視界に入る度に、きっとこれからも俺は彼女のことを思い出すのだろう。
誰の記憶にも残らなくなったとしても、ずっと俺だけは。
少しばかり苦い、淡い恋の味と共に。