恋する旅のその先に
“まだら”を意味する“mottle”。
それから──
「哀しい想いをしてもさせても、道理に反してるように思えても、先の先をみて振り返らないあなたにはぴったりでしょう?」
つまりは──“悖る”。
「なぅ」
『ははは。お嬢さんはなかなかセンスがおありのようだ』
少しだけ、彼は振り返って微笑んだ。
そしてとっ、と全身のバネを活かしてアスファルトを蹴って塀に登ると、
「なぁ~」
『悪くない』
次に向かう風の後ろ髪に目を凝らした。
でも実は、もうひとつ“もとる”に充てられた漢字がある。
それは──“戻る”。
いつか無事あの少女の元に彼が戻れるようにと願いを込めて。
素敵な冒険を与えてくれた彼への、せめてものプレゼント。
どうしてそれを彼に伝えないのかって?
きまってるじゃない──
──ふたりの関係がうらやましいからよ。
やれやれ。
私の場合はまず王子様を探しにいかなきゃ、ね。