恋する旅のその先に
ラムネ。
夏の風物詩のひとつ。
それと同時に、わたしにとっては想い出の1ページへと誘ってくれる鍵でもある。
日傘がやけてしまいそうな程の陽射し。
アスファルトから立ち上る熱気。
めまいかと錯覚させる逃げ水のイタズラ。
木洩れ日のささやきが命のきらめきを思わせると、それと対のように蝉が命の儚さをその叫びに乗せる。
そんな日常と非日常が交錯する夢うつつな世界でひとつ──彼の存在は、そこだけやけにくっきりとわたしの瞳に映っていた。
今になって思えばあれが初恋だったのかもしれない。