恋する旅のその先に
学校の帰り道。
沿道のわずかな木陰で太陽からかくれんぼしながら歩いていたわたしの視線の先に、彼の姿。
反対側の沿道で級友と笑い合いながら、どこかで買ってきたのだろうラムネを飲んでいる彼に、思わず顔をふせる。
陽射しを全身に浴び、褐色の肌をなお焦がす彼は汗をかきながらも、むしろそれが心地好さそうにみえた。
ふと、空を仰ぎながらラムネをあおる彼の喉に、視線が止まる。
喉仏の動きに、なぜだか胸がどきりとした。
たぶんそれは、そのふくらみに“男性”を感じたからなのだろう。
けれどそのときのわたしにはその理由がよくわからなくて、ただ困惑しつつも気付けば歩調がゆっくりになっていた。
むせかえる、青くさい夏草の香り。
彼の快活な笑い声。
木の葉の隙間から肌を刺す夏の光。
あの土地を離れて久しいけれど、今でも、ラムネをみかける度にあのときの光景が鮮やかに脳裏に蘇る。