恋する旅のその先に
メランコリックなBGMに揺り起こされて、俺はゆっくりとまぶたを開けた。
右手には100円均一で買ったボールペン。
左手には同じ所で買った、空の絵柄が入った便箋。
どうやら文面を考えていたらいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
視線を便箋に落とす。
そこには「拝啓」とだけ書き記されているだけで、その先には何も書かれてはいなかった。
「だからガラにもないっての」
レターセットに同封されている封筒にはすでに宛名が書かれている。
それはこの世で1番愛していた女性のもの。
「…………」
無意識に過去形にしてしまった自分に苦笑い。
それは喉の奥をぐっ、と締め付けるような痛みへと変わる。
何を書こう。
何を書けばいいだろう。
何を書くことが今の俺に出来るだろう。
幾度となく繰り返した自問自答に、俺は再びまぶたを閉じる。
きっかけは、1枚の招待状だった。