恋する旅のその先に
男は非常に迷っていた。
さりげなくも印象に残る物。
そう、つまりはプレゼント。
誕生日の。
相手は客先の事務員。
まだ恋人という間柄ではなかったが、自分としては“いい線いってる”という自信はあった。
後はきっかけだ。
幸いにも男は先日、“たまたま”彼女が口にした、
「来週の日曜日、実は誕生日なんですよ~」
という情報から、これを使わない手はないと考えた。
だがしかし、問題がある。
相手はあくまでもまだ密かに好意を寄せている女性。
そんな相手にあまり大層なプレゼントをするわけにはいかない。
渡した後に告白をするにしても、あまり高価なものでは金で好意を買うような気がしてならない。
それで“釣れて”も嬉しくもなんともない。
むしろ幻滅するだけだ。
かといってありきたりなものではつまらない。
愛情の深さと物の金銭的価値は比例などしないが、それがいかに特別であるか、相手にインパクトとを与えることが出来るかどうかというのは重要。
そこがなんとも難しい。