恋する旅のその先に
君は知っていただろうか?
彼氏の愚痴を笑顔で聞ききながら、奥歯を俺が噛み締めていたことを。
君は気付いていただろうか?
学食にいつだって君より早くきて、すぐに顔がわかるように入口に向かって座っていたことを。
君は覚えているだろうか?
泣きじゃくる君の頭に手を乗せて、
「誰のもらい手もなけりゃ、その内俺がもらってやってもいいぜ」
と冗談めかして笑ったあの日のことを。
俺以上に君を理解してるやつなんていやしないだろう。
けれど、それと隣にもっともふさわしいかどうかは別なんだよな。
恋人ってやつは案外、そんなもんなんだろう。
ま、そもそも。
君の存在を胸の内から追い出そうとして他の女性と付き合った時点で、俺にはその資格がなくなったんだけどな。