恋する旅のその先に
暗がりの中、見も知らぬ異性とよくわからない会話をするというなんとも不可思議な時間。
運命かしら?
なんてことが脳裏をよぎるけれどもそれはすぐに消えて。
代わりになんだか急に喉が渇いてくる。
「あの……失礼しますね?」
「あぁそうですね。お引き止めして申し訳ありませんでした」
名残惜しい気もするけれど、冷静になって考えれば夜道で人気の少ないこんな場所。
ちょっと危ない。
私は軽く頭を下げると、自宅に向かって歩き始めた。
警戒したと思われたかしら?
でも私にはここで晩酌に誘うような冒険心なんてなく。
でもそのくせ、もう少し話をしたかったな、なんてことも思ったり。
煮え切らない。
どうやら今日はビールが苦くなりそうだ。