恋する旅のその先に

 ぶつぶつと愚痴をこぼしながら着いた席。

 隣の彼はまだ来てなくて。

 ほっとしたような。

 がっかりしたような。

 あぁ神様。

 どうか彼に気付かれませんように。

 あぁでも気付かれますように。

 うつ伏せてしまいたい。

 けれどそんなことしたらまた余計な癖が髪に出来てしまいそうだから、意味もなく机の中を整理してみたり。

 と、

「っはよ~」

 教室の入口から彼の声。

 彼は決まって後ろの入口から入ってくる。

 だからいつも肩をぴくんっ、と跳ねさせてしまうわたし。

 他のコたちと挨拶を交わしながら、段々と近付いてくる足音。

 それに合わせるように高鳴っていく、鼓動。

 あぁやっぱり帰ってしまいたい。

 手にじっとりと汗をかいたわたしに、

「っはよ」

 いつもの声。

「はっ、はぅよ~」

 緊張は限界を超えて、交わす言葉の意味もよくわからなくなってくる。

「あ、髪……」

 わ、わ、わ。

 気付かれた?

「切ったんだ?」

 どうしよう、どうしよう。

 嬉しい。

 恥ずかしい。

 飛び跳ねたい。

 逃げ出したい。

「ふぅん……」

 な、なんでしょうか、その反応は。

 やっぱり変かな?

 やっぱり変だよね?

 あぁもぅ、やっぱりわたしの人生終わ──

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