恋する旅のその先に

 前髪を切りすぎた翌朝ほど、ハッピーな日はない。

 寝癖は必死になおさなきゃだけど、彼がほめてくれるならそんなものどうってことない。

 どんよりねずみ色の空だって、きっとわたしに嫉妬しているからで。

 こんな日は微分積分かかってきなさいな気分。

 嬉しさは表に出し過ぎないよう、さっき空けた机の中のすき間に詰め込んで。

 あふれ出した分は、机の下でギュッ、と握りしめる。

 でないと口許がゆるみっぱなしになっちゃうから。

 あぁでも。

 やっぱり嬉しいよ。

 どうしよう、どうしよう。

「あ……」

 はい?

「でも頭の後ろ、跳ねてる」


 あぁぁぁぁ……。



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