恋する旅のその先に
なのにどうしてこんなにもこの場所を離れがたく思ってしまうのだろう。
荷物が視界に入る度に、性懲りもなくガムテープを剥ぎ取って中身をもう一度確かめたくなってしまう。
そんなことをしたところで、後ろ向きな感情しか出てこないとわかっているのに。
せいぜい出来るのは、どうやって処分してしまおうかと頭をひねることくらいなのに。
引っ越し業者が部屋に来るまでの間。
わたしはじっ、と天井を仰いだまま、風に髪が揺れる回数を数える。
扉を開けるベルが鳴ることを待ちわびながら。
けれど鳴らなければいいと願いながら。
じっ、と。
手足の指先が冷えてしまうのも構わず。
ただじっ、と。