恋する旅のその先に
だから、ひと目惚れなんておこがましい。
いや、この場合ひと耳惚れ?
まぁそんなことはどっちでもいい。
ともかく。
これは神様のイタズラに他ならない。
そうさ。
その通りだ。
でも。
まぁ。
肉まんを食べ切るまでなら、ちょっとここで休憩するのもいいかもしれない。
片手で自転車を運転するのはやっぱり危ないし。
他で休もうにも暇つぶしの音楽は聴けないし。
社会勉強という言葉も世の中にはあるらしいし。
普段と違う世界にちょっと寄りかかるのもいいんじゃないだろうか。
自転車のスタンドを起こし、僕は彼女の視界に入らないように壁に寄りかかる。
空は、足元の方から夜の帳にもぐりこみ始めていて。
僕はひとつ、身震いをした後にまた肉まんを少し、口にした。
それはすっかり冷めてしまっていたけれど。
なぜだか今まで食べた肉まんの中で、1番おいしく感じた。