恋する旅のその先に
背中を押すように、発車のアナウンスとベルが改札の向こうから聞こえた。
それを合図に走り出す。
黒の学生服ではなくなった、灰色のスーツを傘代わりにして。
あのコはあのとき、風邪を引きなどしなかっただろうか。
過去は変えることなんて出来ない。
でも。
“願い”は時を越えていけるはずだと。
だから俺はずぶ濡れになりながら、久方ぶりに顔を思い描いた神様に祈った。
もし、彼女が風邪を引いてしまいそうになっていたのなら──
──俺が風邪を引きますから、と。