恋する旅のその先に
寄せては返すジレンマ。
こういうのをひとり相撲っていうのかな。
あぁそうか。
わたしは彼にも同じ場所にきて欲しいんだ。
やさしくエスコートされて舞台に立たせて欲しいわけじゃない。
わたしひとりでそこに上がるんじゃなくて。
彼と共に、そこにいたい。
だからわたしは手袋をしない。
やさしい彼のことだから、そうしていればいつか必ず、
「手、冷たいだろう?」
そういって、あの大きな手でわたしの手を包み込んでくれるはずだから。
今日も彼の隣でかじかんだ両手をすり合わせる。
精一杯の合図。
あつい抱擁なんていまは望まない。
ただ今は、あなたの手の温もりだけを求めるの。
この真っ赤になった“奥手”があかぎれてしまう前に。
ねぇ、早く包み込んでね?