恋する旅のその先に

 瑠璃色のガラス瓶に女は涙をひと雫詰め込んだ。

 琥珀色のガラス瓶に男はため息をひとつ詰め込んだ。

 互いにそれを海へと放つ。

 男は北の空の下から。

 女は南の空の下から。

 見知らぬ誰かにその哀しみを気付いて欲しくて。

 それは人という波にもまれながら、のまれながら、だがしかしゆっくりと流れていった。

 そして月が3度生まれ変わった頃、偶然か必然か、ひと組の男女の元に。

 女は琥珀色のガラス瓶を手にとり、

「愁いのある色合いね」

 と、うっとりとしながら熱い吐息をこぼした。

 男は瑠璃色のガラス瓶を手にとり、

「なんて繊細で美しい」

 と、あまりの愛おしさに目頭を熱くした。

 そしてふたりは、それを我が家に持ち帰り、飾る。

 男は寝室のベッドの脇に。

 女はキッチンの窓際に。



 それが不思議な“引力”を持っているなどとは、知る由もなく。

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