恋する旅のその先に
そしてさらに3度月が生まれ変わった頃。
男は街のホームセンターへ向かった。
あの瑠璃色の瓶にライトを入れて照明にしてはどうだろうと考えたからだ。
女は街の園芸ショップに向かった。
あの琥珀色の瓶を一輪挿しにするのもおしゃれじゃないかと考えたからだ。
半刻後。
男は目当ての買い物を済ませて意気揚々と店を出て、ふと小腹が空いたなと思う。
そこで軽く首を巡らせてみると、右手の前方に1軒のファストフードの店が。
「いやいやこんなときはおしゃれにオープン・カフェが筋というものだろう?」
誰に対しての筋かはわからないけれども、男はそういって再び首を巡らせる。
しかしながらあいにくと周囲に食事が出来そうな店はそこだけらしく。
「やれやれ。まぁ、逆にこういうのもアリなのかね……」
普段ならば多少の空腹など気にも留めない男であったが、なぜかこのときはともかく視界に入る範囲内で食事がしたかったのだ。
その少し前。
女はちょうどあの瓶の色に映えそうなオレンジのガーベラを買ってほくほくと表情をほころばせていた。
それにしてもどうして今さらこんなことを思い付いたのか。
自分でも不思議に思いつつ、その衝動を抑えるつもりなど毛筋ほどもなかった。
きっかけは先日。
キッチンに置いていたせいか少し油が飛散していて、それを綺麗に洗っていたところでふと思い付いたのだ。
思ったが吉日。
そして今にいたる。
さて早く帰って花を生けなければならない。
けれどもそろそろお昼の時間で少しお腹が空いてきた。
とはいえじっくり腰を据えて食事をしていたのでは花が枯れてしまう。
「あぁ、あそこがいいわ」
いって足を向けたそこは──ファストフード店だった。