恋する旅のその先に
「あ~違う違う違う!」
わたしは今歌詞を書き込んだばかりのルーズリーフをくしゃくしゃ、と丸めて壁に投げつけた。
思いの外へろへろな勢いでそこに当たった紙くず。
転がった所にはすでに同じ顔した先客がいくつもいて。
「こんなの書きたいわけじゃないのよぅ~」
文化祭でバンドを組むことになったのはまぁいい。
それがいきなり話したこともない男の子からの誘いだったのもよしとするわ。
曲がオリジナルってことも、なんだかマンガみたいでちょっとわくわくする。
でも、
「なんでわたしが歌詞つけなきゃなんないのよぅぅぅ!!」
今までポエムのひとつも書いたことがないわたしになんだってこんな大切なこと頼むのよ。
現国なんて毎回平均点以下なのにっ。
「でももうライヴ明日だしなぁ……」
今さら出来ませんなんていえるわけがない。
あぁ、なんだってあのとき面白そうだなんて思っちゃったんだろう。
そもそも彼が悪い。
あんなキラキラした瞳で、しかもどこから知ったのかわたしの好物のシュークリームを手土産に持ってきたりなんてするから。
それに、ちょっと、カッコ可愛い感じだったし……。
「わたしのばか……」
あれだ、こういうのを“後悔役立たず”っていうのね。
あれ?
違った?
まぁいいや。
それよりも今は何とかしてこれを完成させなきゃ。