月と太陽
しばらく走るとハアハアと息をついてエセルは立ち止まり、しゃがみこんだ。
冷たくゴツゴツした地面に足が触れた。
地に手をついて前を見つめる。
ただ暗闇が続くばかりだ。
あの少女が言った事は本当だ。
七歳の時のエセルの想い。
エセルは顔をうずめた。
怖い。
誰かが自分の前からいなくなる事が。
父さんや母さんのように私をおいていかないで――
首にかけているペンダントを強く握った。
自然と涙が頬を伝う。
「泣かないでエセル」
聞き覚えのある声だった。
ずっと昔に聞いてからもう二度と聞けないと思ったその優しく包み込むような声。
「母さん……?」
自然と出たその言葉とともに前を見る。