月と太陽



すると父がエセルに微笑みながら手を差し出した。


「おいでエセル。また三人で暮らそう。もうお前を一人にはさせない。さあ――」


エセルにためらいはなかった。


また三人で暮らせる。


二人がいなくなった九年前からずっと夢に見ていた事。


それが叶うのだ。


エセルは手を前に出した。


しかしある人達の顔が頭をよぎった。


フェリア、サスティン――


そうだ、私まだシャインをお姉さんに会わせてあげていないのに……


『必ず"三人"で帰ってきましょう』


『自分が何かに負けそうになった時は私たちがいる事を忘れないで』


そう言ったのは私じゃない。


私にはまだ自分のしなければいけない事が残ってる。


それに私を温かく見守ってくれる人がいるんだ。


私はその人達を信じなくちゃ。


エセルはしっかりと二人を見据えると言った。


「ごめんなさい。私は一緒にいけない。私には『この国を守る』という任務が終わってないから……」


この言葉に迷いはない。
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