月と太陽



レオルの言った言葉でエセルはハッとした。


試練があった日の前日、レオルとシャインが頑張れと言ったのは明日は会えないからだ。


そして『明日、お前たちが会うのは私であって私ではない』とはそういう意味だったのか!


するとサウラーが低く、落ち着いた声で言った。


「私が使う"夢操魔法"はその名の通り、"夢を操る"事ができる魔法だ。古い魔法でな。相当な魔力を必要とする魔法だ。今はほとんど使われていない…君たちの昨日の食事には睡眠薬を入れさせてもらった。この部屋へ運んでくる途中に起きてもらっては困るからな」


サウラーがフッと笑う。


そして前を向くと元のキリッとした目で続けた。


「この街の者だけが使えるのが夢操魔法だ。当時の人々はそれを試練に生かした。そして最もその魔法が使える者を町長に任命し、試練を行わせるようにした。つまり試練の内容は昔から変わっていないという事だ。この街の試練で試されるのは"精神の強さ"。それを試すために夢の中では精神を不安定にして試練を行うようにしているのだ」


サウラーの言った言葉でエセルが珍しくあんなに怒った事にも納得がいく。
< 191 / 201 >

この作品をシェア

pagetop