月と太陽
中に入るとふわっと古い木の香りが鼻をかすめた。


細長い円の形をした大きな机の周りには二十脚はある椅子が綺麗に並べられており、前の方にある椅子にフェリアが座っていた。


エセルは前の席に行くと、フェリア隣りの椅子に腰を下ろした。


ミーティング室に二人以外に人はいない。


「どうして今日に限って寝坊したの?エセルにしては珍しいよね」


座った途端、フェリアはエセルの顔を覗きこみながら言った。


エセルはふっと笑った。


「本を見てたの」


そう言うとエセルはフェリアの方に向き直る。


「第十八代目の王、サイレス様が書いた“月と太陽”を。なんか急に読みたくなって」


エセルは苦笑した。


するとフェリアがおかしそうに笑う。


「ほんと好きよね。その本」


それを聞いたエセルは微笑みながらもコクっとうなづいた。


その時だった。後ろの扉の方でガチャッという扉を開く音がした。
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