月と太陽
「なるほど、そうか!」


エセルが何か思い出したかのように大きな声で言った。


「国の決まりによって衛兵を動かす事の出来るのはその部隊の衛兵隊長だけ。つまり試練をクリアしないと衛兵を使う事は出来ないのね」


ツェーラはそんな淡々と言うエセルを感心したように見つめる。


「その通りだ。衛兵がいなければ戦いと言っても話にならんからな」

ツェーラはそう言って苦笑した。


何しろ国の決まりは絶対に破ってはならない鉄の掟なのだ。


それを破る事はいくら緊急の事態と言え、許されない。


それは月の誇りでもあったのだ。


「ではなぜ俺たちを選んだのですか」


ふいにサスティンが強い口調で言う。


するとツェーラはサスティンに向き直った。


「その答えは簡単じゃ。一つは君たちがこの国きっての実力の持ち主だからじゃ。史上最年少の衛兵隊長エセル、国の重要情報管理のフェリア、作戦実行班所属のサスティン。三人共、十六、十七という年齢でありながら重要な地位を持っている実力者だ。そして二つ目は――――王や私の信頼だ。君たちを選んだのは王だしな」


「王が……?」


その言葉を聞いて、エセルは言葉を失った。


王、直々の推薦なんて!


エセルは飛び上がりたい気持ちを押さえるのに必死だった。
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