不機嫌な果実
「あっ、呼んでるよ!
早く行ってあげないと」
「あぁ、うん。そうだな。じゃ、また」
ぎこちなく手を振る相澤は、美和の元へと走り寄った。
相澤は何を言おうとしたんだろう。
まぁ、きっと大したことではないだろうけど。
相澤の背中を見送ると、麻紀もようやくチェックインした。
館内はお香の薫りと檜の香りとに包まれていた。
ソファーの置かれた大きな窓からは、竹林が顔を覗かせている。
緑が青々としていて、目に優しい。
差し出されたお抹茶と竹包みの羊羮を頂くと、エレベーターに乗り、部屋へと向かった。