不機嫌な果実


風呂から上がり、部屋へ戻ると、すでに大浴場から美和たちは戻ってきていた。


「あー、渡辺さん、ここにいたんですか?」


美和の甘ったるい声が、麻紀を出迎えた。


風呂上がり、美和の頬はほんのりとピンク色に染まっていた。


髪をアップにし、鰻重(うなじ)を露にした美和の肌は、女性の麻紀から見ても色っぽかった。


バッチリと化粧をしているところは、さすがと言うべきか。


「露天風呂、よかったですよ〜。ねぇ?」


「ほんと、気持ちよかったですよ。渡辺さんも来たらよかったのに」


「うん。時間がなかったから部屋の檜風呂にしたわ。なかなかよかったわよ。落ち着いてゆっくり入れたし」


「そうなんですか〜?じゃあ、あたしもあとで入ってみようっと!」


今日の部屋割りは、新入社員の美和と可奈。


そして、麻紀の一つ下の由香という、四人部屋だった。


美和と可奈のキャピキャピは、若さ所以なのかもしれない。


同じように思ったのか、目が合った由香と互いに苦笑いを浮かべた。



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