不機嫌な果実
「渡辺さん!」
振り向くと、小菅の姿があった。
ほっそりとした体つきではあるけど、浴衣がよく似合っている。
やや開いた胸元からは肌が露出していて、男性にしては色白でドキリとした。
視線を合わせるのが恥ずかしくなり、麻紀は咄嗟に俯いた。
その拍子に今度は裾からチラリと脚が見え、その細さと綺麗さにさらにドキドキした。
「――渡辺さん!聞いてます?」
「えっ、うん。聞いてるわ。で、なんだっけ?」
「このあと、会の進行を僕たちで進めていく話ですよ。渡辺さんさえよければ、僕が司会をしましょうか?」
「うん。そうしてくれると助かるわ。いつでもフォローはするからね」
「わかりました。そのときはよろしくお願いしますね」