不機嫌な果実
「慣れてるの?こんな仕事」
「えっ、僕ですか?そんなことないですよ」
刺身の鯛に醤油を付けながら小菅は答える。
「かなりうまいわよ!どこかのインチキ司会者かと思ったもの」
竹のスプーンで茶碗蒸しを掬いながら麻紀は言った。
「ひどいなぁ!インチキはないでしょう、さすがに!
大学時代、サークルのコンパで仕切ってただけですよ」
ちょっと怒ったふりをした小菅は、麻紀にビールを勧めた。
「ストーップ!!」
危うく零れるかと思ったが、うまい具合にグラスすれすれのところで泡が止まった。
白と黄色の二層に分かれて、とても綺麗だ。
ごくごくと、口に含んでみると、気のせいか、ビールが柔らかく感じる。
「なんか、このビール違うね。泡がまろやかな感じがする」