不機嫌な果実
「小菅くんも遠慮せずに、どんどん飲んでね」
中澤さんに勧められるまま、小菅は二杯もグラスを空にした。
「すごーい!いい飲みっぷりね。お酌する甲斐があるわ」
小菅は二杯くらいでは何ともないらしい。
水のようにガブガブ飲んでいるさまを見ると、だいぶサークルで鍛えられたのだろう。
それにしても、中澤さんのはしゃぎっぷりには目を剥く。
確か、中澤さんには大学生と高校生の息子さんがいるはずだけど。
小菅のことを気に入っているのか、背中をバンバン叩きながら大口を開けて笑っている。
息子とそう変わらない若い社員なのに。
すごく楽しそうだ。
身体をしっかりと小菅に向けて、時折ボディタッチを挟む。
小菅も半身を中澤さんに向け、グラスを傾けている。
半ば、麻紀は無視されたような格好だ。