不機嫌な果実


「小菅くんも遠慮せずに、どんどん飲んでね」


中澤さんに勧められるまま、小菅は二杯もグラスを空にした。


「すごーい!いい飲みっぷりね。お酌する甲斐があるわ」


小菅は二杯くらいでは何ともないらしい。


水のようにガブガブ飲んでいるさまを見ると、だいぶサークルで鍛えられたのだろう。


それにしても、中澤さんのはしゃぎっぷりには目を剥く。


確か、中澤さんには大学生と高校生の息子さんがいるはずだけど。


小菅のことを気に入っているのか、背中をバンバン叩きながら大口を開けて笑っている。


息子とそう変わらない若い社員なのに。


すごく楽しそうだ。


身体をしっかりと小菅に向けて、時折ボディタッチを挟む。


小菅も半身を中澤さんに向け、グラスを傾けている。

半ば、麻紀は無視されたような格好だ。



< 118 / 210 >

この作品をシェア

pagetop