不機嫌な果実
でも、なんでだろう。
右隣に座る小菅のことが気になって仕方ない。
部長の方に顔を向けているはずなのに、麻紀の意識は小菅と中澤の二人に注がれていた。
離れた席では、上司に囲まれた美和の甘ったるい声とそれに同調するような低音がドッと響いていた。
美和のいる席は、ひときわ賑やかだった。
美和のように若い社員ならともかく……。
麻紀よりも一回り以上も年上の中澤は、小柄で年齢よりも若く見られる。
とはいっても、40代後半だ。
そんな中澤と楽しそうに酒を飲んでいる小菅の姿に、胸がチクリと痛む。
自分にだけでなく、やはり他の女性社員にも愛想のいい小菅に、勝手に腹が立つ。
なんで、あたし……。
そんな気持ちを遮断するかのように、追加の飲み物を注文しに行ったところ、入り口で相澤と出くわした。