不機嫌な果実
「楽しんでるか?」
「あっ、うん。小菅にビール二杯も飲まされちゃった!参ったわ」
ううん。
本当は飲まされたのではなく、自分から勝手に飲んだんだ。
「そっか。最近、小菅と仲がいいんだな」
「えっ?そんなことないけど。ほら、あたしたち幹事だし。――あっ、そうだ!元はと言えば、部長と弘樹があたしたち二人を推薦したんじゃない!」
言ったあと、『しまった』と思った。
別れたのに、馴れ馴れしく『弘樹』と呼び捨てにしてしまったから。
バツが悪く俯いた麻紀だったが、相澤はさして気に留める風でもなく、普段と変わらない様子だった。
「あー、ところでさ。あとで部長から話があると思うんだけど」
「部長が?……あたしに?」
なんの話だろう?
営業部の部長があたしに話すことなんて、あるのかしら?
まさか『お見合いしろ』とでも?
嫌よ、そんなの。