不機嫌な果実
「いや、麻紀にというわけではないんだ」
「えっ?じゃ、どういうこと?」
ますます意味がわからない。
「あぁ。そのことなんだけど。麻紀には先に伝えておこうと思って」
相澤の話し振りから、何か重要なことのような気がする。
でも、それ以上に……
久しぶりに『麻紀』と呼ばれたことに対し、条件反射のように胸が騒ついた。
いちいち反応する胸の騒つきを鎮めるように、麻紀は大きく息を吸い込んだ。
メニュー