不機嫌な果実


足を組み換えた相澤が、ちらりとこちらを見た。



「もう一つ麻紀に言っておかなきゃならないことがあるんだ」


「えっ?」


「人づてに伝わるよりも自分の口から言っておきたいから」


名前で呼ばれるたびに、いちいち胸が煩い。


それよりも、人づてが云々……って、何かよからぬこと?


一度首を傾げた麻紀は、思い切って相澤に尋ねた。


「なに?」



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