不機嫌な果実


――ねぇ、どうしてそんな顔であたしを見るの?


――そんなにあたしって、惨めに映る?



麻紀は少しばかり潤んだ瞳で見つめる小菅に、そう問いたかった。


でも、言葉にならず、下唇をキュッと噛んだまま押し黙った。


「ちょっと、気持ちいい風に吹かれませんか?」


そう言うと、小菅は麻紀の手を握り、何食わぬ顔で歩を進めた。


――ドクン。


慣れないシチュエーションに胸をドキドキさせながらも、どこか麻紀の心は落ち着きを払っていた。


真横に並ぶ小菅を下からそっと覗き見る。


麻紀よりも頭一つ分大きい小菅。


顎から下がスッとしていて喉仏がはっきり見える。


年下だし、華奢なイメージもあったけど、案外、肩幅も広かったことに気付く。


―――…!!



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