不機嫌な果実
「そうですか」
そうですか、って。
あまりにも呆気ない返答に、麻紀は呆然とした。
気にもしないのに、あたしをあそこから連れ出したっていうこと?
おまけに手は繋がれたまま。
どうして自分が小菅と手を繋いでいるのかさえ、理由もわからない。
訳もなく、焦りが生じる。
「あー、それより、なんであたしがあそこにいたこと知ってたの?」
急に現れて、本当に驚いたんだから。
おまけに目隠しまでされたし。
「見てましたから」
「はっ?」
「渡辺さんが宴会場から相澤さんと一緒に出ていくのを見ていましたから」
「えっ、なんで?」
「出て行く直前、険しい表情を浮かべてましたよね。だから気になってたんです」
「えっ、」