不機嫌な果実
「どうしました?大丈夫ですか?」
咄嗟に、麻紀の小さな身体を小菅が包んだ。
すぐ近くに熊がいると思うと、ガクガクと震えが止まらない。
ニュースや新聞で度々報じられるように、もしも熊に襲われでもしたら……。
いやー、そんなの!
再び、頭を大きく振った。
「コラッ!こんなところでイチャツクんじゃない!社員旅行だぞ」
呂律の回らない、その声に聞き覚えがあった。
大きな影がゆさゆさと左右に動きながら、ゆっくりと二人に近付いてきた。