不機嫌な果実


乳白色の湯を両手で掬い、額から頬へゆっくりと指を滑らせていく。


指先でポンポンと頬っぺたを押してみると、温泉の効能なのか、肌に弾力を感じる。


元々、もち肌の麻紀だったが、いつも以上に肌が潤っているような気がする。


もう一度、お湯に手を沈め、両手で掬った。


飛沫を拭うと、さっきまでの出来事がたちまち脳裏に浮かび、またしても麻紀の気持ちは高揚してきた。



「やだ、あたしったら」


そんな自分に照れ笑いを浮かべ、身体を少し浮かせたときだった。



――カラカラカラカラ。


ゆっくりと引き戸が開く音がした。



< 169 / 210 >

この作品をシェア

pagetop