不機嫌な果実


一人きりの露天風呂を満喫しようと思っていたのに。

敢えなく残念。


あまりにも短い時間だった。


若い人かしら?


湯気で姿形までは、はっきりとしない。


きっとそうよね。こんなに遅い時間だもの。


おばさまたちは就寝している頃だわ。


ゆっくりと湯槽に近付く客に気を遣うように半身をずらし、麻紀は夜空を眺めた。



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