不機嫌な果実


ここは旅館。


おまけに社員旅行。


こんな場所で何かあったなんて周りに知られたら、大変な一大事!


笑い事では済まされないはず。


いや、笑い事どころか、二度と会社にも行けなくなるかもしれない。


こんなところで、一生を棒に振るなんて……。


いつ他の客が入ってくるか分からない状況に、麻紀の心臓は最高潮に跳ね上がった。


「肌、きれいですね」


そんなことお構いなしに、暢気に呟きながら麻紀の項(うなじ)を五本の指がなぞっていく。


「きゃっ!」


小さい悲鳴が漏れた。


「ふふ。可愛いですね」


どうして、こんな大胆なことができるんだろう。




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