不機嫌な果実


ベッド横のナイトテーブルに置かれていた灰皿にタバコをギュギュっと押し付け、火を消した弘樹は体を向き直した。


「この話は、ひとまず終わり。また今度な。もう遅いから寝ようか」


「そうね」


「おやすみ」


「おやすみ」



おでこから唇に落とされたキスに力が抜ける。


微睡む意識とともに、弘樹の大きな胸元に身体を預けると、トクントクン…と優しい心音が聞こえた。


その優しさに包まれながら、麻紀は遅い眠りに就いた。






< 25 / 210 >

この作品をシェア

pagetop