不機嫌な果実
男友達の前でも、甲斐甲斐しく世話を焼く英里。
『ほんと可愛いよな、英里ちゃん』
『駿の彼女にしておくのはもったいねぇよな』
みんなの評判も上々で、小菅は鼻が高かった。
微笑ましくその様子を見ていた小菅が席を立ち、トイレから戻ってきたときだった。
さっきまでの和やかな雰囲気が、肌で感じるほどに明らかに一変していた。
「あれ、どうした?何かあった?」
「ううん。何もないよ。
さっ、早く座って!」
明るく振る舞う英里の横で、目を合わそうとしない男友達。
不自然な彼らに、小菅は首を傾げた。
後に理由を知って、小菅の中で英里に対する懐疑心が芽生えた――。