不機嫌な果実


でも、これは、ほんの前触れに過ぎなかった。 


小菅はこのあと、英里の本当の怖さを知ることになる。 


あれは、入社して1ヶ月が経った頃だ――。


新入社員の同期会で、帰る方向が一緒になった女の子と電車に乗っていたときだった。 


〜♪〜♪〜♪〜


小声で電話口で話す小菅に対し、浮気していると勘違いした英里は、突然ヒステリックに……! 


『どこにいるの?誰と一緒なの?』


周りの乗客の目もあり、『電車の中だからあとで連絡するよ』と慌てて電話を切った小菅。 


そのあとも、しつこいくらいに鳴り止まない携帯。


「彼女さんから?」


「あぁ。心配性なんだ」


苦笑いを浮かべ、小菅は電源ボタンを迷わずに切った。 



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