不機嫌な果実
コンコンとノックされ、振り返ると白衣を身に纏った50代くらいの白髪の医師が回診にやってきた。
「ご家族かお知り合いの方でいらっしゃいますか?」
「あ、はい」
「今は薬も効いて静かに眠っておられます。ご安心ください」
「そうですか。ありがとうございます」
よかった……。
ホッと胸を撫で下ろした小菅は、再び英里に向き直った。
英里はまだ眠ったままだ。
コホン、と一つ咳払いした医師が続けた。