不機嫌な果実


だが、その後も、別れ話になるたびに英里は自殺未遂を繰り返した。


医師が予言した通りだった。

別れたくないがために、心を繋ぎ止める手段として、何度も騒ぎを起こした。


「いやー!別れたくない。あたし絶対に別れないから」


荒れ狂って、部屋中のありとあらゆるものを投げつける英里。


そのたびに、窓ガラスを何枚も割った。 


修理が追い付かないほどに。

どうしようもないときは、110番通報し、パトカーが出動した。


警察官も始めのうちは、じっくりと話を聞いていたが、そのうち「俺たちも暇じゃないから痴話喧嘩なら二人でしてくれよ」と言って、即座に帰っていくことも多かった。


あるときは、警察が思うような対応をしてくれないと逆上した英里が、台所から包丁を突き出した。



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