不機嫌な果実
〈5〉イチゴの誘惑
「渡辺さん、今夜、時間ありますか?」
「時間?どうして?」
「僕に付き合ってくださいよ」
「私が?どうしてよ?」
「渡辺さんと一緒に食事がしたいからです」
「あっ、そう。
でも私はしたくないからやめとく」
「どうしてですか?」
「彼女持ちと行ったら後々面倒なことになるでしょ?修羅場は御免だから」
「それなら心配いりませんよ。彼女とは、もう終わったも同然ですから。
それより、どうせ暇なんでしょう?僕に付き合ってくださいよ」
「あのねぇ……」
「楽しそうだね。何を二人で盛り上がってるの?」