不機嫌な果実
「はい。総務の菊池さんですよ。相澤さんたち、付き合ってるんですよね?」
「えっ、あぁ。うん、まあな」
歯切れの悪い相澤のトークに、内心うんざりしながら麻紀は窓の外を眺めていた。
通りを行く人たちが、傘を開き始めた。
どうやら雨が降ってきたようだ。
天気予報を信じて傘を持ってきて正解だった。
「それなら菊池さんも誘ってあげて下さいよ。4人で行きましょうよ」
「――えっ?ちょっと待ってよ!だから、あたしは行かないって言ってるでしょ!今日中に仕上げなきゃならない書類があるの。あなたたちみたいに暇じゃないんだから」
くるっと踵を返して、フロアーに戻ろうとした麻紀の腕を小菅は躊躇うことなく掴んだ。
「ちょっと待って下さいよ、渡辺さん。話はまだ終わっていませんよ。
4人が嫌なら僕と2人で行きましょうよ。それならいいですよね?」
「だから……」
「何のお話されているんですか?」