不機嫌な果実
甘ったるい毒気をもったその声に麻紀の背中を虫酸が走るような不快感が走り抜けた。
本能的な嫌悪感とでも言おうか。
男女問わずフレンドリーな麻紀ですら、美和のようなタイプは苦手だった。
このオンナが来るとややこしい。
話がでかくなるから。
それに、相澤と美和のツーショットなんて、見たくもない。
こちらから願い下げよ。
さっさとここを退散しないと残り半日、仕事に集中できなくなる。
「じゃ、あたしはこの辺で。まだ片付けないといけない仕事が残ってるから」
「ちょっと、渡辺さーん!
まだ話終わっていませんよ」