不機嫌な果実


「あのねー、あたしは約束した覚えないし!」


「したじゃないですか!
相澤さんも菊地さんもいたときに」


「あれは……。
それに、断ったはずでしょ!あのときに」


「いや、話の途中で渡辺さんがいなくなったから」


「仕事があったのよ!」


「仲がいいんだね、二人は」 


「いえ、そんなことないです…」


だんだんと声が萎んでいく。


柏木がいるのも忘れ、小菅の口車に乗ったことをひどく反省した。 


やっぱり、調子が狂う。 

いや、狂わされる。


どんよりとした気分の麻紀に、さらに小菅は明るい声で追い討ちを駆けた。



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