不機嫌な果実


……あっ、違った。あたしの目的はあっちだった。


思い出したかのように、途中まで捲ったパンフレットをすぐさま元の場所に戻した。


くるりと体を向き直し、目指すは国内旅行コーナー。


『伊豆・箱根 温泉探訪』『近場でゆったり高級旅館』『上質な寛ぎとおもてなしの宿』等と書かれたパンフレット一式を手にしてみる。


ケーブルカーで旅館へ。


伊豆近郊でとれた海の幸・山の幸の会席料理。


旅館の目玉は、部屋からひと続きの露天風呂。


お客様を第一に考えた寛ぎの宿。


ワインを飲みながらスパで癒される美のプログラム。


ふむふむ。誰にも邪魔されず、部屋でゆっくり温泉に浸かれるのはいいわね。


でも、これは社員旅行には向かないかも。


彼氏とのデートならバッチリだけどね。



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