不機嫌な果実


「あー、そんなことより、皆さんの出欠出揃いましたよ」


「それで、どうなったの?」


「渡辺さんの総務も、うちの営業も全員参加でした」


「えっ、全員?」


「はい。皆さん協力的ですよね。夏休みだし、僕も半数ぐらいかなと思っていたんですけど」


「……そうね」


麻紀の顔に翳りの色が見えた。


全員となると、相澤も美和も参加するということ、か。

あの二人がいるだけで、なんとなく気が重いのよね。

まっ、それも仕方ないか。

同じ会社で働いている以上は。


心の中で納得すると、「帰るわよ」と小菅に告げ、パンフレットを小脇に抱えた。



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